- 2009年10月 9日 14:34
- Book
"アンティキテラの機械"、1901年、ある海綿漁師がアンティキテラ島沖で古代の沈没船から奇妙な歯車をもった金属物体を引き揚げるところから、この壮大な科学ノンフィクションは始まる。
アンティキテラの機械と名付けられた金属物体は、歯車を持った何らかの装置であったが、その物体は紀元前のものと推定され、既知の歯車を持った装置から1000年以上も前に作られたものとわかる。中世・古代史の常識とは大きくかけ離れたものであった。
そして、このアンティキテラの機械に魅せられとりつかれる人が次々に現れる。果たして何のために、どんな知識人がこのアンティキテラを作ったのか。そして、そこにはアンティキテラにとりつかれた人の数奇な人生と、アンティキテラにまつわる新発見の歴史が刻まれる。
この本では、とにかく時間スケールの大きさ、なにせ現代と古代ギリシアの間を行ったり来たりするのだから、そして、つい最近までの技術進化によってもたらされる新しい知識の連続に魅了される。
さらに、著者の類まれなる感受性と豊かな表現力によって、この科学ノンフィクションは単なるノンフィクションではなく、遥か昔の古代ギリシアへ思いを馳せる土台ともなっている。
最終的に、現在も研究は進められているものの、このアンティキテラの機械は極めて精巧に作られた、太陽や月、惑星の運航、"食"、"暦"などを計算する現存する最古のアナログコンピュータということがわかる。そして、この技術が古代ギリシアから綿々と受け継がれ、中世の時計、そして産業革命につながる礎となっていたのである。
しかし、著者はこう書いている。
だが、私の心に深く残るのは、私たちと古代人との近さではなく、遠さだ。
現代人は歯車でできた時計を用いて、そして時計を超えるテクノロジーによって、どんな古代人よりも宇宙について理解をしている。その代償として、時計によって刻まれる時刻によって少なからず自由を損ない、人工の光で、星にあふれる夜空を失った。
しかし、古代ギリシア人は、その同じ歯車を用いたアンティキテラの機械によって、その豊かな知識を表現し、天空に浮かびあがる星々の美しさと、そこに座する神々に近づく方法を追求していたのだ。
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