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ノーベル化学賞

  • Posted by: 電脳あざらし
  • 2008年10月 8日 20:04
  • 2008

ノーベル化学賞は下村脩・Martin Chalfie・Roger Y. Tsienの3氏に決まった。
日本の報道で良く感じるが、こういうとき、日本人のことばかりを取り上げる傾向があるような気がする。ノーベル賞のサイトを見てきたが、功績を単純に賞金の分配率で判断すると、3氏とも均等の功績という判断なのだから、せめて3氏の名前ぐらいは3人とも放送すべきと思う。また、単独受賞ではないことからも下村脩氏のGFP(Green Fluorescent Proteinの頭文字をとってこう呼ぶ)の業績だけではノーベル賞に値するようなものではないように考える。

さて、1970年代にGFPというタンパク質を発見したのは下村脩氏である。オワンクラゲという生物から、GFPをただ分離・精製しただけでなく、”なぜどのように発光・蛍光するのか”というメカニズムを発色団をある程度同定することによって明らかにしたのである。

これから、しばらく時は流れ80年代にはいり、分子生物学の発展に伴い、あるグループがこのGFPの元となる遺伝子を同定するとともに、cDNAというものを用いて、実際にGFPタンパク質を生体内で発現(作らせる)ことに成功する。が、惜しい事に、当時の”常識”では単体で発光するタンパク質はないと考えられていて、このグループは「なんらかの他の酵素が発光には必要なのだろう」という結論に至ってしまう。

さて、その後、Martin Chalfieは大腸菌にGFPを作らせて発光することを確認した(これが重要で、GFP単体で2種類以上の生物で発光するということは、「おそらくオワンクラゲに限らずどんな生物の中でも発光するのではないか?」という可能性を考える)後、C.elegansという線虫(生物学ではモデル生物として良く使われる)で、このGFP遺伝子をβチューブリンという細胞内骨格に必要な役割を果たすタンパク質のプロモーター(遺伝子の発現を制御する領域)配下におき、発現させ、C.elegansの発生に伴い時系列的に特定の場所でGFPができていることを確認する。
さらに話を進めて、次に遺伝子組換えで、あるタンパク質にGFPをくっつけたタンパク質を発現・発光させることにも成功する。このことから、生体内で見てみたいタンパク質にGFPをくっつけたタンパク質を発現させれば、生体内でそのタンパク質をGFPの発光によって観察することができることがわかった。

さて、Roger Y. Tsienは何をしたかというと、GFPにわざと変異をいれ蛍光の色が変わったGFPをいろいろと作り出した。また、オワンクラゲとは別の種から赤色の蛍光をもつDsRedというタンパク質をとってきて、これにもいろいろと変異を加えて、色が違ったり、より明るかったり、より長持ちするGFPを作りだした。これによって、例えば1個の細胞内の2種類のタンパク質を同時に観察するなど、”道具”としてのGFPの価値が飛躍的に高まった。

その結果、いまでは、以前より複雑な手間がなく、生物種を問わず、細胞を壊さずに、遺伝子の発現やタンパク質の局在などなどを観察できる、バイオテクノロジーでの必須ツールとも呼べる存在になったのである。

長々と書いてしまったが、要するに下村脩氏がGFPを発見し、Martin ChalfieがGFPを遺伝子やタンパク質の働きや発現、局在などを観察する”道具”として使えることを実証し、Roger Y. Tsienが”道具”としてのGFPを使いやすくしたため、バイオテクノロジーの必須ツールとしてGFPが大活躍する現在の研究環境を整えた、ということになる。

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