- 2008年9月11日 00:48
- Book
本書は、東海村JOCで起きた臨界事故によって大量の放射線に被曝した故大内久氏の治療の記録である。
たまたま、図書館で見つけてチラ見して興味深そうだったので借りてきたのだが、読み始めて臨界事故による放射線被曝の圧倒的なすざまじさ、専門医療スタッフのあくなき努力、そしてこれらを丁寧に取材し、一冊の本にしたNHK取材班のすごさに、ひと夜で読み終えてしまった。
そもそも、この臨界事故は、高速実験炉「常陽」に使うためのウラン燃料を、本来行ってはいけない方法で加工していたためにウラン燃料が臨界(核分裂が連続的に起こる状態)に達してしまったために起こったものである。このためにエネルギーの高い中性子線が大内氏、同僚の篠原氏を襲った。
この本に書かれている、大内氏の闘病の様子、例を見ない大量被曝に対応を迫られた専門医療チームの懸命な治療・苦悩はまさに壮絶である。放射線によってずたずたになった染色体の写真、どす黒く変色した皮膚の写真は何とも痛ましい。
そして、放射線に弱い血液や皮膚、粘膜(これらの組織は特に細胞分裂がさかんなため放射線によって細胞分裂ができなくなると影響が大きい)が機能を失っていく。これらに対処するために、あらゆる手段が講じられる。絶え間ない薬物投与、造血幹細胞移植、皮膚移植などなど。
詳細はとても書ききれないのでぜひ本書を読んでいただきたいと思う。
いま、日本は電力の多くを原子力に頼っているが、”いざ”という時の体制が欠けていることを専門医療チームは人命軽視だと強く指摘している。
大内氏、篠原氏の死は、原子力行政に届いたのだろうか。私たちはこの事故からどれだけのことを学べたのだろうか。臨界事故から9年ほどたつが、これまでもこれからも常に問いかけ続けなければならない問題だろう。
ちなみに、この臨界事故で核分裂を起こしたウランの量は1/1000グラムであるという。
| 朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫) | |
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